「それで、僕のところに来ればどうにかなるんじゃないかって踏んだわけだね」
「はい」
外はもう暗い。
結局、あれからずっと資料を読み漁った京耶は、部屋で眠ってしまった真空を置いて此処に来た。
久野の研究室(という名目で借りられている部屋)は、意外とこじんまりとしている。
京耶たちの寮とは、建物二つ分ほど離れた別館にある。
寮の部屋というよりは、ホテルの部屋に近い。
豪華すぎるとも思う。
だが、その裏にある中将としての威厳や、過去を振り返ってみるとこれでは足りないような気もする。
「それは残念だなぁ。二人とも、僕の部下じゃないからなぁ。どこにいるのかさっぱり…」
いや、そういうことでなくて――と京耶は首を振る。
「その、101小隊の話、隊長も関わっていたのではないのですか?」
久野の眉間に、うっすらと皺がよる。どうやら何かを知っているようだ。
「京耶君、君は…不語の話というのを知っているかい?」
不語の話。
聞いたことがある。
「あれですか、あの…[国家公安委員長に因る口伝]でのみ、語られるという」
そう、それは。国家公安委員長。
詰まるところ、國の最高権力である。
総理大臣。
「そんな…口伝でしか伝えられないような、そんな酷いことが起きたんですか!?」
座っていた椅子から立ち上がる。その拍子に、テーブルに足をぶつけた。
「それは…」
「あたしが教えてあげる」
ドアの向こうから、聞こえた声。
カチャリと音を立てて、そっとドアが開く。
「お久しぶりです、久野中将」
「おや、倉内中尉。もう現地偵察は終わったのかね」
倉内――ひょっとして、彼女が。
「ええ、退屈…じゃなかった、比較的楽に終わったのです。それと、呼び方。いつもどおりでいいですよ」
「ああ、すまんね。で、閑君、Variantの巣窟は、結局あったのかい?」
何だかとても仲良さげに話をする二人を尻目に、京耶は小さなパニックを起こしそうになる。
「ああ、そうだ。彼、鈴本君。僕の新しい部下なんだけどね。その、何だ、101小隊の…」
101小隊。そう聞いて、倉内の表情が変わる。
「ええ、聞いてました。ドアの前で」
そういって、彼女は振り向く。
揺れる髪、重力に逆らうポニィテイルに、両耳にはピアスの山。
これぞ、彼女のスタイルと言えるような雰囲気である。
「よろしく、鈴本君」
差し出された手を、一瞬だけ迷い握り返す。
「鈴本、鈴本京耶です」
彼女は笑っていた。
「さて、じゃあ早速話をしましょう。あ、でもその前に…」
電話、お借りしますね。と一言だけ言って、返事を聞く前に受話器をとる。
どうやら内線電話らしい。
相手が出たらしく、少ない言葉で話を終えて彼女は受話器を置いた。
「すぐ来ると思うから、ちょっと待っててね」
「は?」
全く以って、意味がわからなかった。
「彼を呼んだのかい」
「ええ。あたし一人じゃどうにも説明できないので」
久野とそうやって軽く話をすることができるのが、少しだけ羨ましい。
「失礼します」
軽いノックの音につづいて、ドアが開く。
「あっ、春日君きたー」
春日?一体全体誰なんだろう。
「久しぶりだね、倉内。調査の方はどうだったんだ?」
にこやかな笑顔で、倉内と熱い抱擁を交わすこの男。
「へへー、大ニュース、もぎとってきたよ」
ほめてほめてと言わぬばかりに、春日という男にじゃれ付く倉内。
まるで、犬みたいだ。心なしか、尻尾がはえているように見えなくもない。
しかし、その笑顔は、まだ幼い少女のようでもあり――。
と思った矢先、久野から告げられる。
「鈴本君、彼らが例の101小隊の生き残り――」
二人は、ふっと気付いたように、こちらを向く。
「元101小隊隊長補佐。現黒金戦団隊長、春日小牧」
「同じく、元101小隊隊員。現黒金戦団服隊長、倉内閑。です」
二人は、簡単に挨拶してきた。
「あ…と、178小隊隊員、鈴本京耶です」
それに対し、敬礼をとる。
形としては、向こうの方が上官なのである。
ふと、挨拶を返して思う。
たしか、生き残りの片方はハルヒとかいう名じゃなかったか――ちがう。目の前にいるのは、春日という男。
…そうだったのか。
春日と書いて、かすがと読むのか。
そう気付いたとき、もう既に二人はソファに座って談笑していた。
つづく。
※前回、寮の説明からの続きとなります。前回分「RING」は、12月17日になります※
※PCから閲覧している方は、ブラウザ右端のカテゴリ「匣 」から、[異端寓話「」]を選択していただくと、すぐ飛びます※
とは言うものの。まだまだ物足りないと感じることはあるわけだが。
「ちょっと、聞いてるの?」
軽く深みに嵌りかけた京耶を引き戻したのは、誰でもない彼女だった。
「あ、ああ。聞いてる。101小隊の事件のことだろ」
そう、それで気になって調べたの。と彼女――前園真空はカバンから資料を取り出す。
「何だその…軽く広辞苑三冊分ぐらいありそうな…」
明らかにおかしいだろうという膨大な資料の量に、思わず目が点になる。
「いいから、聞いてほしいのよ。あ、隣、いい?」
「へ?ああ、うん」
不意をつかれドキリとする。
「ふう…でね、ここなんだけど…」
近い。いや、ちょ、近い。
すぐ隣に、彼女の顔がある。視線は、京耶に渡した資料にだけ。
「えっと…あった」
資料を一枚ずつめくる彼女は、そんな京耶に気付いていない。
髪…いい匂いだ…。
慣れていないのだ。こういう状況に。
彼女が話があると、彼の部屋を訪れたのは、つい先ほどのことである。
大きなカバンを抱えていた。
とりあえず、いつもどおり、彼にとってはいつもどおりにベッドに腰掛ける。
その正面に立って、彼女は話を始めた。
何でも、半年前に壊滅した101小隊のことを調べはじめたらしいのだ。
それで、今現在彼女は部屋に来て、こうやって隣に座り、肩を並べて資料をめくっているわけだ。
半分、もたれかかるようにされているので、京耶の肩に、軽く彼女の重みがかかる。
いや、ね?重いってわけじゃないんだよ。ね。
でもさ、その。
慣れてないんだよ、本当に。
あの――オキナワから帰還した時だってそうだ。
まだ、一週間も経っていないけれど。
オキナワから帰還する時、「Leichtsinnige-Lauf-Zug」の中での出来事。
あまりの疲労感に耐えかね、京耶は睡に落ちてしまった。
他の皆も、眠っていたように思える。
隣には、やはり前園が座っていた。
目を覚ました時、勿論、隣には前園がいるわけだが。
京耶の肩に、首をかしげるようにして身体を預ける前園の姿があった。
声に出せぬ驚きと、女性に免疫のない彼にとって、これがどれほどのものだったのか。
本人でなければわからないということもある。
で、だ。
今もそんな、似たような状況であるわけだ。
勿論、彼女の話は耳に入っていない。
一体、彼女が何をしにきたのか、本当にわかっているのだろうか。
「で…ここ。誰も帰還しなかったかと思ってたの」
「…」
京耶は、それどころではない。
「でもね、この人、倉内閑さん。と、もう一人…ええと」
肩から存在感が離れて、ハッと意識を取り戻す。
資料を片っ端から漁る彼女に、手伝う素振りもなく、ただ見ているだけ。ただただ、じっと見ているだけの京耶。
「あった!」
嬉々とした顔で、振り向く彼女。
見惚れた。
純粋に、彼女の綺麗さに見惚れた。
「京耶君?どうかした?顔赤いよ?」
言われて気付く。
やばいやばい、これはやばい。
「い、いや、別に…」
言い終わるか終わらないか。
「熱でもあるのかしら…?」
こつん、と。小気味のいい音がした。
前髪をかきあげて、自分のおでこと京耶のおでこをくっつけたのだ。
「………………!」
声にならない。
衝撃。
恥ずかしさ。
あと、何だか色々と混ざった感情がぐるぐるぐるぐる。
京耶の頭の中でぐるぐるぐるぐる。ぐるぐるぐるぐると。回っていく。
「熱はないみたい…本当に大丈夫?」
医務室行く?と、曇った顔で聞いてくる彼女。
対する京耶。心臓はバクバクと鼓動を高鳴らし続ける。
「や…ほんと、大丈夫だから…つづけて…」
息も絶え絶えに、そういうしかなかった。
「そう?じゃあ、続きね」
と言って、また京耶の隣に座る彼女。
もう勘弁してくれ!
と。心の中で叫ぶ。男なら、誰でも一度ぐらいは憧れるんじゃないかっていうくらい、レアなやつ。
おでことおでこをくっつけて熱を計る。
普通に考えて、羨ましいだろ。と突っ込みを入れたくなるも、残念なことにこの部屋にはこの二人以外に誰もいないのである。
そんな京耶とは裏腹に、彼女の方は、全く以ってその気はないようでる。
なんとも。なんともいえぬような状況である。
「この人、ハルヒ 小牧さんっていう人なんだけど…京耶君、知ってる?」
振り向く彼女に、少しずつ落ち着きを取り戻した京耶は言う。
「いや、知らないな…あ、でも、隊長が知ってるかもしれないな…」
「久野隊長?」
「ああ。ひょっとしたら、色々教えてもらえるかもしれないぜ」
根拠も何もなしに、京耶は言う。
「うーん…じゃ、明日行きましょう」
「これからじゃなくて?」
前園の言葉に、つい、え?っという顔をしてしまった。
「ええ。だって、私はこれを全部読んだけれど、京耶君はまだでしょう。だから、今日はこれを全部読むまで寝かさないからね♪」
うわ。満面の笑み。すごい可愛い…。
「…え!?」
「はい、じゃあ、頑張ってね」
とニッコリ笑顔で渡される、広辞苑三冊分ぐらいの資料の山。
「大丈夫、読み終わるまで、一緒にいてあげるから」
沈んだ心が急浮上。ついでに、うなだれていた顔もあがる。
「京耶君が、一行たりとも読まなかったり、適当にこなさないように、ね」
ぽかーんと。口が半開きなのがわかる。
そうしていると、彼女は再び呟く。
あ、そうそう。途中で寝たら、お仕置きするからね。
鬼だ。
此処には鬼がいる!
彼女は、京耶の思っているような女性とは、どうやら少し違ったらしい。
笑顔の向こうに、鬼の姿が見え隠れしながらも。
京耶は資料に目を通すことにした。
夏の最中。
蝉の鳴く声が聞こえるころだった。
次回。(掲載予定)
京耶と前園は、久野隊長の下に訪れる。
そこで出会った、101小隊の生き残り。
倉内とハルヒによって語られる、「Variant」たちの真実。
そんな時、緊急を報するベルがなった。
おはようって言われて、目が醒めた。
君の顔が、すぐ目の前にあるもんだから。
思わずおはようって、返しちゃったじゃないか。
オキナワから帰還して、二日目の朝。
あの地で起きたことが、今でも夢現のように思える。
かといって、別段どうということはない。
ただ、少しだけ、生活が変わった。
前園と行動を供にするようになったのだ。
「Der Ritter der Gerechtigkeit」のメンバーは基本的には本部の寮に住むことになっている。
実際のところ、寮に入居している割合は、8:2程度である。
一部は、身寄りをなくしてしまった子供達にあてがわれて。
寮にいないものは、比較的安全なところに住まっているのである。
実際のところ、この寮の住み心地はかなりいいと評判である。
オートロックに防音。侵入者には直ちに制裁が下る。
食堂の料理の種類も充実していて、各国の料理も味わえる。
何という夢のようなところであろうか。
ってな感じで、続きが少しずつスタート。です。
一記ですこんばんわ。
今日のBGMは陰陽座で「煙々羅」
聴きながら、流石、稀代の名曲と呼ばれることはあるねと。いつもながらに思っております。
そうそう。好きな人が、変わったのかもしれませぬ。
秘密ですよ。
面白い話も今日はないねー。
明日はあれだよ。山田氏と釣り行ってくる。
コメントにレス
toエッショ
いやいや、もうやめなさいよ、コロコロとか買うのは…歳を考えなさい。
っていう突っ込みでいいですかね?
ひっさしぶりに大曽根へ。
相変わらずのあのカード屋。
おたくっぷりが激しくて、気分が悪くなる俺。
帰宅して、内臓さんのおうちでマジックして終了。
そんで、帰宅。
後は何かあったかなー。
メールしようと思って、間違えて電話かけちゃったぐらいかなーw
そんぐらいしかねーw
しーゆーあげん。
名乗る必要はない 2秒で終わりだ。
こんばんわ。
夕飯に牛丼を作ったので、画像をうp。
意外と美味くできたのが、俺にとっても不思議でたまらない。
今日は一時間ぐらいしか外に出てない。
明日が提出期限の、学生証用の写真を撮って、それを封筒に入れてポストに投函。
ってことしかしてない。
Sound Horizonの、ボーナストラックとかげと。
今回の謎解き、すげえよ。
何か初めてmixiが役に立ったもん。
でも、すげえひどいと思ったのは。
タワレコの予約特典が、異常に豪華だってこと。
だって、未発表音源とかついてて.
アニメイトだっけか、アナザージャケット…。
どこだったか忘れたけどな。
3ショップ分の特典を合わせて、やっと一つになるとか。
こんな、V系のCDじゃあるまいし…。
やってられへんわああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!11111111
超やってらんねえええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!11111111111111111111111
泣けてくる。
後は、少しだけモンハンして、またリオレイアが倒せなくて、時間無駄にしたじゃねえか!!
とか怒りながら。
で、その後DVDを漁って、パイレーツオブカリビアンとか見てみた。
いや、面白かったよ。
風呂で一人海賊ごっこしちゃうぐらい面白かったw
さて。
続きでも書くか。
月が出ている。
綺麗な月だ。
「Variant」をものともせずに、久野は雄たけびをあげながら一匹一匹を屠っていく。
前園は確実に仕留めるまで、照準をはずさない。
対して――実戦経験のない京耶が、ヒース・グリムに立ち向かえるかどうかが問題である。
「どうした、かかってこないのか?」
答えられない。
ヒースの瞳を見た瞬間、身体が言うことをきかない。
まるで、蛇に睨まれた蛙だ。
見れば見るほど魅入られる。
「…怖気づいたか、下等生物」
ヒースの罵声がかけられる。
京耶の指が、辛うじて反応した。
腰に下げていた自動小銃を構え、引鉄を弾く。
弾丸全てがヒースの身体を貫く。
「…痛くも痒くもないなぁ」
きいていない。
まるで痛みを感じていないみたいだ。
「くそ…なんできかないんだよ!」
カチカチと、弾切れの合図のように音が止む。
京耶は小銃を捨てて、素手で殴りかかっていった。
「無駄ですよ」
しかし、「Variant」であるヒースには全て受けられてしまう。
まるで殺陣のように、全て受けられる。
「なかなか上手いじゃないですか」
皮肉を言われ、京耶の攻撃は単調なものになっていく。
不気味な笑みをうかべ、ヒースは飛び上がる。
「な!?」
京耶が思わず声をあげる。
「鈴本君!下がって!」
後方から叫ぶ声に聞き覚えがあった。
前園の声だ。
素直に従い下がる。
途端、凄まじい爆音と火花が散った。
「はっ、この私がそんなものにやられるとでも…」
言い終わる前に、ヒースの首が不自然な方向に曲がった。
「気付けこのド阿呆が」
ヒースの瞳に写ったのは、双剣を構えた久野。
奴が何故ここにいるのか。
地上からはゆうに20mも離れているというのに。
首の角度がおかしいのは、久野に蹴り飛ばされたからである。
「下等生物があぁぁぁぁぁぁっっ!」
背中めがけてその双剣を振り下ろす。
いとも簡単にちぎれた羽は、ひらひらと宙を舞う。
飛ぶ力を失ったヒースは逆さまに地上目掛けて落下していくだけ。
視界に入る前園と京耶。
久野とか言う男は、そのまま地上に落ちた。
私はこのまま海に落ちるだろう。
深い眠りにつくことになるのだろう。
ヒース・グリムは海に落ちた後、浮いてこなかった。
他のベースキャンプに連絡をとってみる。
負傷者が5人、それ以外の損傷はなし。
しかし、京耶の想いは、その仲間達を心配するほど余裕があるわけではなかった。
「…」
「はい、鈴本君」
目の前におかれるカップ。
この香りはミルクココアだ。
「飲むと落ち着くから、ね」
前園は微笑んで言ってくれた。
それに返すこともできずに、京耶は沈んでいた。
畜生。
何も出来なかった。
しかも、女である前園と久野に助けられた。
命は助かったけど。
俺の力が足りないのか。
あれこれ考えていると、急に背中から抱きしめられる。
「鈴本君、よくがんばったね」
「ま、前園…」
何で、こうなっているのか。
よくわからない。
「怖かったよね、でも、よくがんばったね」
優しく、そして暖かい。
安心した。
少しだけ、恥ずかしかったけど。
癒された。
安堵のため息すら、今ならつけそうだった。
「それじゃ、私は寝るね」
すっと離れていく前園に、思わず声をかける。
「あ、前園…」
振り返って、何?という前園。
「い、いや…なんでもないよ」
前園はまた微笑んで、テントを出て行った。
「京耶君、ちょっと」
久野が呼んでいる。
「ごらん、月が綺麗だよ」
久野に呼ばれ、テントから出る。
確かに、月は綺麗だった。
「…」
何も言えない。
自分の不甲斐なさに。
「京耶君、強く、なりたいかい」
ふと、久野がもらした言葉を、京耶は聞き逃さなかった。
「…はい」
「そうか…でもね、ひとつだけ知っておいてほしいんだ」
満月のおかげで、相手の顔がよく見える。
「あのVariantたちは、この国の、人たちだっていうこと」
わかっていた、はずだった。
「彼らはね、みんな人だった。いや、Variantになっても人だっていうことを」
「…隊長?」
「私が言いたいのはね、君は人殺しに、鬼になれるかってことだよ」
人殺し。
今、初めて気付いた。
当たり前のように、争う人と「Variant」。
「で、でも隊長、それじゃ…」
これは、戦争ではないと思っていた。
「今までに、何人弔ってきたか、もう覚えていないぐらいだよ。ほんの、最近起きはじめたことなのにね」
久野は、一人でずっと苦しんでいたのだろうか。
ふとそんな考えが頭の中でおきる。
「最初こそ、さっきの君のように足すら動かなかった」
けれど、と久野は続けた。
「目の前で大事な家族を殺されちゃ、ね」
京耶の瞳に移るその姿は、何処か哀しいものがあった。
「さて、答えは明朝までに頼むよ」
君は今日はもう休みなさい。
そう言われて、足元に視線を落とす。
「…隊長」
「なんだい」
「このVariantも…やっぱり…」
「…ああ、そうだよ、この島の島民達だ。」
聞くまでもなく、わかっていたことを再確認する。
人の口から言わせることで、もう一度自分に叩き込む。
俺、俺は。
「じゃあ」
言葉に出来ない、想いもある。
「今だけは、せめて」
その一言が、京耶の意思を物語っていたのは言うまでもない。
「人でいたい。だから、彼らを埋葬したい。人であるなら、そうしてやるのが、せめてもの情けだと」
「ああ…それはいい提案だね。でも今日は疲れただろう。明朝、君の決意を聞く前に弔ってやろう」
京耶の世界は、廻りはじめた。
人が人であるために。
人が人という存在である以上。
何が定義であるのか、京耶には検討もつかない。
しかし、これだけはいえる。
まだ、人の心を持ち合わせている、と。
次の話の予告を。
神人に選ばれた、竹田雪絵(たけだゆきえ)は、争いを好まぬ者。
訓練こそ真面目に受けはするが、「Variant」と化した者達を元に戻す方法があるのではと、日夜探し回っている。
そんなある日、級友の本牧に異変が…。
何か、だんだんびみゃうになっていく気がするなあさあwせdrftgyふ
ま、寝ます。
しーゆーあげん。
しあわせにおなりなさい
おりあわせしになさいな
零音に繋がる星屑の革紐
天秤を揺らす、天使の彫像
隻眼にして隻腕の、アルバレス将軍につづく者
賢者の内に潜む、message
朝と夜の物語
どうしたの、と聞けない俺がいるのか、聞こうともしない俺がいるのか。
それはどちらなのかよくわからない。
名乗る必要はない 2秒で終わりだ
こんばんわ。
今日は特になー…人肌恋しいってぐらいしかない。
なんだろ、時期的なものなんかな。
よくわからんけどね。
一人でいるのは、好きじゃないけど。
でも、誰かといるってのは、人によって様々な感想がある。
彼女とか、できても、相手のことをしろうとしない。
そんな俺。
コメントにレス。
toねちょ
toゆぎ
何だ、二人とも何か気に入ってくれたみたいでw
嬉しい限りです☆
でも今日は…あんまりネタが…とか思ったけど。
どうせこの後は服を洗濯機に入れて寝るだけだから書いてみようか。
少しだけ。
鈴本京耶(すずもときょうや)が「Der Ritter der Gerechtigkeit」に入団したのは、もう四年も前のことになる。
「Variant」の出現から一年程の時が流れ、成す術なく東奔西走していた京耶。
そんな時、「Der Ritter der Gerechtigkeit」の結成式が全国ネットでメディアを通して配信された。
『同胞達よ!
我らが国を異形の者供から取り返すのだ!
己が守るべき、大切な者の為に!
偽りのなき、我らが大日本皇国を!
平和の為に!』
騎士団長、村上頌栄の言葉に心打たれ、京耶の胸中で産まれた使命感。
それは、かけがえのない大事な人たちを守るということ。
それが、原動力となった。
あれから半年、京耶は兵役訓練を乗り越えて戦場に駆り出されることになった。
場所は、南の孤島オキナワ。
移動手段として、地下1000mまで掘り下げられた地下鉄の廃線。
そこを通る軍専用の鉄鋼車ルートがあった。
鉄鋼車といえども、他の国とは比べ物にならないほどの代物。
最新鋭の科学技術を施した、新幹線よりも早い速度の出る「Leichtsinnige-Lauf-Zug」(ドイツ語で暴走列車の意)
戦車の砲弾でも破られぬ強化鋼鉄を全面に使用。
通常の地下鉄の路線は、既に閉鎖されている。
何故なら、先の事件以来、地上に蔓延る「Variant」の者供が巣くう巣窟になってしまったのだ。
日本中のどこまでも張り巡らされた非常用の通路を使い、京耶の所属することになった小隊は一路オキナワへ。
そこで生じるであろう疑問。
その地下通路を使い、外への救助を求めることはできないのか。
残念ながら、幾度となく試みたが、国の周りが全て硬い岩盤に覆われていて、それ以上進むことができないのである。
オキナワの地を踏み締め、京耶は驚愕する。
憧れていた常夏の楽園は、一面が焼け野原と化していた。
残っているビルは、無残にもガラスがないなどして、とても仕事ができるという状況ではない。
島の中心へと向かう彼らの前に、奇妙なものがその痕跡を残していた。
それは、抜け殻のようなものだった。
虫の姿形をした「Variant」がいるのは京耶も小隊長の久野も確認している。
しかし、抜け殻となると、今まで誰も見たことのないものだ。
大きさは、成人男性と同じぐらいの背丈のものから、子供の背丈ほどのものまで、大小さまざまであった。
新たな発見と、それにつれて大きくなる不安を他所に、民家のある奥地へと進む。
崩壊している様子はなく、変化のない民家が見えてきた。
安心して胸を撫で下ろす京耶達。
しかし、どこか様子がおかしい。
人の気配がまったくしない。
どこの家を覗いても、誰もいない。
まるで、ゴーストタウンのように。
人がいない代わりに、残されていたもの――抜け殻だけがそこにあった。
夕暮れ、島中の家という家を手分けして探したが、人っこ一人見当たらなかった。
代わりに見つかった、大量の抜け殻が気になる。
夕日に照らされるオキナワの海。
地下通路からほど近い海岸にベースキャンプを張ることになった。
パチパチと焚き火をくべて、簡易な夕食をとる。
島に群生している果物をデザートに、彼ら第178小隊の面々は息をつく。
初任務で緊張していた京耶も、久野小隊長の言葉により、心を和ませていく。
この小隊の者のことも知らないわけではない。
どの小隊からも声がかかるほどの狙撃の名手、前園を筆頭に、名の通った者達が集められた第178小隊。
談笑に浸りつつ、夜は更けていった。
深夜零時を廻ったころのことだった。
交代で見張りをすることになっていた久野、前園、鈴本の三人。
他の小隊員達は、各々に散って、島の南側、東側、西側にベースキャンプを張っている。
前園は眠っている。
聞けば、女だからと言って戦えぬのは不服だと言う。
守るものが、私にはあるから。
彼女はそう言っていた。
最初に異変に気付いたのは、小隊長の久野だった。
「海がおかしい。」
そう言った彼は、まったくもって波のたっていない水面を見る。
水面に浮かぶ何かをその目で捉えた。
紛れもない、「Variant」だった。
水中から顔を出している「Variant」は、一度水に潜ったかと思うと、すぐにその姿を現した。
2mほどはあるだろうか。
人によく似た形を成し、その背には背びれのようなものが見える。
立ちすくむ京耶、久野と前園はすぐさま臨戦態勢を整えた。
まずは久野に驚異的な速さで近付く「Variant」
すぐさま腰に差してあった軍刀「Der Ritter der Gerechtigkeit第一零八劫剣」を抜き正面の「Variant」の足元を払う。
しかしそれを飛び越えた「Variant」は、そのままの速度で前園に飛び掛る。
タァン!
耳に響く音が先か、「Variant」の身体が反れたが早いか。
なんにせよ、久野は「Der Ritter der Gerechtigkeit第一零八劫剣」を抜いただけにとどまった。
「助かった、前園」
倒れた「Variant」はぴくりともしない。
振り向くと、先ほどまで眠っていたはずの前園がスナイパーライフルを構えている。
「いえ…まだあなたに先立たれては困ります」
前園はそういうと、次の弾を詰め込む準備に取り掛かった。
ただ呆然として立ち尽くしていた京耶は、やっと足が動くようになった。
ヤヴァイ、それはヤヴァイよねと、自問自答する京耶。
後ろでは、前園が小隊長に褒められている。
羨ましい。
しかし、それを言っている場合ではないということに気付く。
空に、羽を生やした「Variant」がいる。
その大いなる翼で翔けまわっているのだ。
ひとつだけ、見覚えのあるシルエット。
人の形のシルエット。
其れは京耶の前に降りてくると、一言だけ呟いた。
「腐った人間風情が…」
冷たい瞳、銀の瞳が印象深い男だった。
男は首を鳴らし、更に口を開く。
「申し送れて済まない。私の名は欠片緑(かけらみどり)またの名をヒース・グリムという」
人に通じる言葉で口を開くヒース。
「君達は最高の夜に最高の舞台を用意して待っていた私への、神の思し召しだな」
「是非とも私の退屈しのぎのお相手願おう」
小体長の久野は、続々と降りてくる小型の「Variant」を相手にしている。
前園は、至近距離ながら自慢のライフルで「Variant」を撃ち落としている。
京耶がやるしかないのだ。
続く。
ごめん…、もう三時すぎた…寝ます。
よろしくライドン!!ぬ!