ドライブしてきた。
日付が変わる前に、電話があって。
山田氏から。
「よう、暇か?」
「え、うん、暇だけど」
「よし、じゃあ今から行くわ!」
「え?」
そんな流れで。
岩月の車で、かるーくドライブ。
夜なので、車は少なくてよかった。
他愛もない話だったり、エロい話だったりで。
あっという間に時間は過ぎた。
一時間半、か。
短かったけどな。
帰りしなに、またなんかあったら誘ってくれよ。
って言ったら。
「今の聞いたか?」
「逃がさんぞw」
みたいな流れになって。
また誘われるんだろうな、と。
一記。
ええと、モンハンなんですけどね。
ダイミョウザザミ亜種が殺せないんですけど。
無茶言うなよとか思いながら。
さあ、どうすっかな。
ばーい。
「え、ちょ、これはまずい」
「いや、よけろよwww」
自然と、声が出る。
「ああ、シビレ罠あるけど麻酔玉ねえや…」
圭の顔が、僕を睨む。
「…さいあくー」
一言だけ言って、顔を画面に戻した。
かちゃかちゃと、ボタンを押す音だけが部屋に響く。
今日も月は綺麗だった。
「ああ、やっとおわった」
十五分と経たないうちに、PSPから手を離した。
「骨が折れるねこれは」
「捕獲したいからもう一回な」
本気ですかこの人は。
「…コンビニ行ってくるよ」
「あ、僕もいくよ」
椅子から立とうとして、止められる。
「だめ、お前は留守番な」
「えー…」
その代わり、と言って圭は。
「すぐ戻ってくるよ。それに」
圭の手が僕の上をなぜる。
「今夜は寝かせないから」
微笑んで、圭は部屋を出て行った。
「…今夜は寝かせない、か」
圭が照れる様子もなく言ったので、僕は面食らってしまった。
「どうせ、徹夜でモンハンなんだろうな…」
イヤッホウウウウウウウウウウウウウウウウ!
モンハン解禁だよ!
一記。
朝からゲオに並ぶ子供たち。
に、混じる大人とか、親御さんとか。
どっかじゃリーマンとかいたらしい。
いやいや、そんなにモンハンすきなのかみんな。
とりあえず、あれだ。
人が原付で出ようとしてるとこの真後ろに、チャリを止めるな。
見れば出るってことぐらいわかるだろ、と。
一記。
さて、モンハンするよ。
ばーい。
煩悩がない人間を見てみたい。
いないよな。
一記。
徹夜!
釣り!
銀行!
AUショップ!
ご飯!
な一日。
昼からは寝てました。
そんだけ。
明日はモンハン。
ばーい。
「いい月だね」
圭が言ったのを聞き逃さなかった。
「え?何、漱石?きもいからやめてくれ」
「いや、そうじゃなくて、本当にきれいなんだよ」
こちらを見ることは無く、圭は言った。
視線は窓の外、遥か高い空に固定されていた。
「…本当だ」
確かにいい月だった。
「さて…じゃあ、いこっか」
圭は急に立ち上がって、壁にかけてあったコートを羽織った。
「え、行くって…どこ行くのさ」
「夜桜を見に、さ」
つかつかと彼は歩みを進めて、玄関まで行ってしまった。
取り残された僕は、あっけにとられていた。
「…待ってくれよ、行くから」
いつもと変わらない、そんな夜のことだった。
いつも、というのは、圭と僕が常に同じようなことをしているからである。
昨日だって、今日の仕事があるにも関わらず圭が「お茶でも飲みに行こう」だなんて言い出したから。
おかげで、仕事にならなかったのだ。
実際、それだけが問題ではないのだが。
そんな、日のことだった。