祭りも終わり、境内では後片付けをしているのが見える。
相葉ちゃんと一緒に祭りにきて、ずっと同じ場所でみてた。
「つまんねぇ…」
微かに鳴きはじめた虫の声を聞きながら、ボソリと相葉ちゃんが言う。
「いいじゃん、あたしは相葉ちゃんと一緒にいるの好きだよ」
まだ屋台は出ていて、人もいる。
「…ちっ」
苦い顔をして相葉が言う。
「知ってるよ?いつも一人じゃん、相葉ちゃん」
「…俺は群れるの嫌いなの」
ラムネを一口飲んで、そっぽを向く。
「本当は友達いないだけじゃないの?」
あたしの言葉に吹き出して、相葉ちゃんは咳き込む。
「ごほっ…何言ってんだよ…いないわけ…」
言葉に詰まる相葉ちゃん。あたしはそれを見逃さなかった。
「いないんでしょ?」
「ぐっ…」
ビンゴ。
相葉ちゃんがそうやって言う時は必ずないに決まってる。
「…何なんだよ飯田…俺に何か恨みでもあるのかよ…」
恨めしそうに言うその姿が可愛らしかった。
「なんにもないよ?それより、相葉ちゃんは好きな子とかいるの?」
「は?」
「だから、好きな子だよ。いない?」
「ばっおま…」
顔を真っ赤にして狼狽する相葉ちゃん。
あたしは、本当は知っている。
相葉ちゃんには、好きな人がいるってことを。
「はは、相葉ちゃん顔真っ赤じゃん」
少し、あたしの顔がひきつってるように思う。
「…そういうお前はどうなんだよ…」
「あたし?あたしは…」
相葉ちゃんのことが好きだ。
なんて、本人を目の前にして言えない。
「はは、秘密だよ」
言えるはずがない。
「ふーん…」
会話終了。気まずい空気が流れはじめた。
場違いな音をあげてどこかで携帯が鳴った。
「はい、相葉です」
相葉ちゃんの携帯だった。
「はい…わかりました、すぐ行きます」
一言二言会話して、電話を切った。
「わり、俺行くわ」
ああ――
「また、夏喜さんのとこ?性懲りもなく?
考えるより先に、皮肉っぽい言い方で口を開いている自分がいた。
「…どこだっていいだろ」
流石に鈍感な相葉ちゃんでも気付いたらしく、睨まれる。
「お前には関係ない」
その言葉が、あたしの胸を貫いた。
「はは…そうだね、ごめん」
あたしが謝る必要はなかったように思える。
苦笑いすると、何も言わずに相葉ちゃんは行ってしまった。
ただ一度、振り返って何かを言ったように見えた。
口の動きだけが確認できた。
何を言っているのかはわからなかった。
「…ばいばい」
駆けていく彼の姿を見送る。
人混みに消えていくその背を、追い掛けたかった。
絶対無理なのに。相葉ちゃんが、夏喜さんのことを好いているってことは知ってる。
知ってて聞いたのだ。
あたしは、それでも相葉ちゃんのことが好きだ。
でも、相葉ちゃんは鈍感だから知らない。
とうとう見えなくなってしまった。
その場にいるのが切なくなってきた。
さっきまで一緒にいた、好きな人がいなくなったのだ。
もうそこに彼はいない。
一緒にいた時間が恋しい。
到底叶わぬ恋に身を焦がし、その行く末を知っているというのに。
――ああ―――。
空を仰ぐと、星が綺麗に輝いていた。
もう少なくなった蝉の哭き声を、あたしは聞いた気がした。
夏の終りに…