※異端寓話。日記はもうひとつ前にあります。※
「で、私を置いて二人に会ってきたのね…」
そう言うと、京耶の頬に軽い衝撃と音が響いた。
「知らない…っ」
眸に涙をためて、真空は部屋を出て行った。
あれ、なんで殴られたのだろう。
同時に、酷く心が痛くなってきたので、後で謝りに行くことにした。
しかし、どうしたものか。
「にしたって、ないよなあれは」
聞いたところ、101小隊のことは本来秘密裏に処理されるはずだったということ。
極寒の地、ホッカイドウでの事件。
吹雪の中の、101小隊。
春日と倉内に聞いた、事件の真相は、あまりにも惨たらしいものだった。
「…重いな。」
真空を連れて行かなかったのは正解だった。
しかし、連れて行かなかったのはもっと不正解だった。
「…」
真空がいないと話にならない。
連絡をしようと、真空の携帯に電話をかける。
…。
……。
………。
おかしい、出ない。
ひょっとして、俺がいけなかったのだろうか。いや、他に理由らしきものは見当たらないのだが。
探しに行こう。いや、でもひょっとしたらここに戻ってくるかもしれないし。
…いや、ひょっとすると、ただ用事があって出て行っただけかもしれない。
そう思い込んで、事実を変えよう。うん。それでいいじゃないか。
ふと、携帯が鳴る。
「はい」
「京耶、君…」
電話の主は、誰ならぬ、真空だった。
「あ…どこにいるんd」
「あの…ごめんなさい」
言いかけたところで先に全部言われると、かえっておかしな空気が流れる。
「私、勝手に出てきちゃって…」
涙ぐんで聴こえるその声。少し、安心したのは事実。
「いや、俺こそ…ごめん。とりあえず、戻って、おいで。話をしないといけないから」
京耶は最後にこう付け加えた。
‘101小隊壊滅事件には、もう一人生存者がいた´と。
つづく。
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