異端寓話「 」。
今回は二つアップ。
こちらは、2/9更新分、「泣いた彼女と」の続きになります。
そしてもう一つ、「止まぬ雨の。」は、「真説・異端寓話記帖」の続編となっております。
今回もまた、中途半端な更新ではありますが、なにとぞお許しくださいますよう。
こちらに関してもまた、突っ込みに感想、お待ちしております。
では。
まるで、夢に見ていたかのような、そんな時代。
二十一世紀。
あの頃子供だった者達が夢に描いていた未来は、悉く実現しえなかった。彼の有名な鉄腕アトムでさえ、産まれることはなかったし、きっとこの先だって、ドラえもんが創られることはないだろう。車が空を飛ぶことだって、後何年かかるのか。この、國だけが。今、滅亡の危機に瀕している。
助けは来ない。いや、来ようにも来ることができないでいるのだ。
あの頃子供だった者達は、2007年の春、一機の航空機によって存在を消された。某国の実験兵器の輸送中、輸送機が日本上空で原因不明の爆発を遂げたのだ。
広がりつつある、人のいない地域。まず、トウキョウから。そして、東へ西へ。
それは、一月で全国に広まっていったのだ。
そんな中、山奥に隠れ潜む仙人達によって集められた神人。
そして、自衛隊のつくりし独自部隊が、力を合わせて「Variant」に闘いを挑んだ。
五年が過ぎた。
國の進歩は、これといってなく、どちらかといえば、退化したようにも思わせてくれる。
そんな中で、生きているのは、2007年当時の人口の約三分の一。三分の二は、「Variant」へと成り果てたか、死を迎えてしまったかのどちらかだった。
「京耶君、待ってってば」
まだ少し、陽射しが弱い。春にしては、少し弱すぎるのではないだろうか。
「いいよ、ゆっくりいけばさ」
「もう、だったらもうちょっとゆっくり歩いてくれてもいいじゃない」
真空は頬を膨らませていた。もう子供じゃないくせに、いちいち仕草が可愛い。
「これでもゆっくりだよ」
駅の改札を抜けて、ホームで電車を待つ。
「…その、もう一人の生存者ってさ」
緊張した面持ちで真空が言う。
「うん、何か事件の後にDer Ritter der Gerechtigkeitから抜けて、一人で田舎に帰ったって話だけど…」
「でも…そっちの方が危ないんじゃないの?」
言われてみれば。確かにその方が危ない。まるで、自らを「Variant」の的にしようかともとれる行動だ。
「…そこんとこどうなんだろうな」
ホームに電車が入ってきた。二人は足並みを揃えて乗り込む。
「しっかし、ちょっと遠すぎるんだよねこれが」
真空がキョトンとした顔で聞き返す。
「遠いって、どれぐらい?」
「ざっと目算で、四時間弱。海の傍だって」
ここから四時間弱の距離と言われても、真空はピンとこない。
ま、いいか。
そう思って空いている席を探した。
着いたころには昼を回ったころだった。
「にゃー…こ、これは寒いよ京耶、君…」
自分で自分を抱えて、真空は小刻みに震えていた。
「や、俺も寒い…流石にこれはないな」
電車を降りた途端、冷たい空気に身体を蝕まれる。
「くっそ…久野隊長も倉内さんも、春日さんも何も言わなかったのはこういうことだったからか…」
今にして思えば、三人が三人とも、気温のことは何一つ言わなかったことを悔やむ。もっと突っ込んで聞いておけばよかった。
とりあえず、駅前に止まっているタクシーで行こうということになり、二人はその足を進めた。
続
この記事にトラックバックする