「カムパネルラを殺したのは僕だ」
少年一人、少女が一人、大人の男と女が一人ずつ。
丘の上の、夜景が綺麗な場所で、少女が告白したのはまさしくそれだった。
「そんな、まさかお前が」
「カムパネルラは僕にとって、本来あるべき姿だったと思っているんだ」
少年の問いかけるような言葉に返すことをせずに少女は続ける。
「まるで、本当の僕がそこにいるかのような気分だった」
少女はくるりと、月明かりの下でまわる。
風が吹いて彼女の長い髪とスカートを揺らした。
細い線をした身体は、おとされた月明かりに影をとられる。
「自分を殺したも、同然だ」
少女の瞳は紅い。紅く、染まっている。
「じゃあ、君は、自分が二人と存在してはならないからと言う理由であの子を殺したって言うのか!」
男が怒鳴った。
「違うよ、そうじゃない。僕は、カムパネルラ自身は僕の本来あるべき姿だと思っていたから殺したんだ」
だから、殺したんだ。
「さよなら、諸君。僕はこのまま逃げさせてもらう」
そういって、彼女は丘から飛び降りた。
満面の笑みで、彼女は落ちていった。
丘の向こう側は、急な傾斜のある斜面で。
ゴツゴツとした岩肌が露出していた。
誰もが呆気にとられていた。
少年も、男も、女も。
見ているだけしかできなかった。
落ちていく少女を見ているだけしか。
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