薄暗い部屋で目が覚める。
枕もとの時計は、まだ五時をさしている。これが朝なのか夕方なのかは、わからない。
しかしながら今までの経験からすれば、布団の暖かさと正面にいる人のぬくもりから、朝の五時だということがわかる。あたたかい、というよりは暑い。夏も近づいてきているこの時期に、流石に窓から遠いこの場所にあるベッドは少々寝心地が悪い。風通しがよければ問題にはならないのだけれども。
多少寝苦しいのは、最初からわかっていることだったし、別に悪いとも思っていない。
でも少しだけ、寝返りがうちたくて、身体を動かす。
布団から抜け出したい、とまでは言わない。
「ん……」
身体の向きを変えようとした時、声をあげたのは彼だった。
「恵理、どこいくの……」
ぐいっと、ひねりかけた身体を引き戻される。
寝ぼけている牧野は、いつにも増して素直だから、少し困る。
一緒に暮らすようになって、半月。
どんどん、相手のことがわかっていく日々が続いていく。
それ故に自分を愛してくれていることがわかって嬉しい。
どれだけでも、この人と一緒にいられるって思える自分がいることに、驚きを隠せないけれど。
それでもやはり、この人じゃないといけないと思う自分を否定はできない。
幸せ、なのだ。
現に今のこの状況も、私にとってはとても嬉しいことなのだ。
起きたら話をしてあげよう。
こういうことがあったよって。
きっと、照れながら笑うんだろうな。
ふたり 牧野と恵理の場合
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