忍者ブログ

その数秒を被写体に

日常を主に綴っていく日記。バイクと釣りと、後趣味の雑文なんかが混ざる。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

それでも世界は生きているから ハイネとマリィ篇 裏


世界を越えて、時を越えて。
僕たちは戻ってきた。とは言っても、彼女はこの世界に来るのは初めてだけれど。
エンリッヒとルナリアに再会して、少しの時間が経っていた。
その時のことは、またいつか話そうと思う。
今宵は、星のお話を。
星が落ちる日と名付けられた日が、年に一度だけある。
それは、どれだけの人が信じているのかわからない、夢のようなお話。



「ね、マリィ、も、眠た、いよ……」
ハイネは眠たそうにあくびをして、眼をこする。袖が長くだらんとしたシャツを着て、星のついたナイトキャップをかぶっている。というか、シャツしか着ていない。誰の趣味とは言わないけれども、暑いこの時期ならば、うってつけの格好だろう。
「もう少しで見れるはずだからさ、我慢してよ」
対する僕――マリィ――は、寝る時ぐらいは楽な恰好をしたいので、普段のベストにパンツではなく、ワンピースを着ている。ルナリアが選んでくれたものだ。ハイネのは自前らしい。初めて会った時はこんな俗っぽい格好をする子だとは思わなかった。……ひょっとして、僕のせいか? そんな疑問がふと浮かんできた時、背に重さを感じてはっとした。
「マリィ……寝よう、よ……」
耳元で囁かれるマリィの声に身体が反応した。明らかに誘われている。眠たいだけのハイネは、そんな意識をしていないのだろうけれど、僕からすれば誘われているのと大差なかった。
「駄目だよ、星を見なきゃ」
何とか自制心を保ち、ハイネの髪に触れる。
「んぅ……」
また、ふわあとあくびが聞こえる。
そりゃあそうか、今日は昼寝すらしていないから、眠たくもなるよね。
「ま、仕方ないね」
ハイネに背中から降りるように促して、ふっと窓の外に視線を流す。
一筋流れる光が見えた。
「あっ……ハイネ、今の見た?」
嬉しくなって、僕が窓の外を指差すと、ハイネはただ、「見てな、い……」と首を振るだけだった。よっぽど眠たいようだ。
無理矢理にでもハイネに外を見させて、星を待つ。
しかし、空はただ暗闇を映すのみ。
どれだけでも待つつもりでいたのだが、一向に次の星は来ない。あれだけかと思い、ハイネのためにベッドメイクをしはじめた時だ。
「あ……マリィ、あれ…… 」
ハイネの声に振り向く。
今にも眠りそうなハイネが、窓の外を指差している。その向こうに、流れる星。
それは、僕が見たようなひとつだけではない。
これぞ、流星群だと言わぬばかりのものであった。
「きれい……」
ハイネが呟き、僕はその隣に並ぶ。
今まで、幾度となくこの流れ星をみてきたけれど、こんなにも大量の流れ星を見たことはなかった。
視界を覆うほどの、大量の流れ星。
星が落ちる日。
僕たちは、流れていく星をただひたすら見届けるために、そこにいた。



鳥の鳴く声で目が覚めた。
床に座り込んで寝ていたようだ。ううん、あまり覚えていないような気がする。
確か星を見ている途中で、ハイネが喉が渇いたからって置いてあったグラスの中身を飲み干して……。
床に転がっているワインの瓶が生々しい。
「ひいふう、みい……こんなにあったっけ」
動こうとして、まだフラフラすることに気づく。
「っ……頭いたい……って、これ、エンリッヒの……」
そうだ、これはエンリッヒの書斎にあるはずのワイン。どれもこれも希少価値が高いとか言ってて、僕は触らせてもらえなかったんだ。
だんだんと記憶が鮮明になってくる。
部屋にあったワインを飲み干したら、ハイネがまだ呑める、呑み足りない、呑ませてくれないならわたしが呑ませてあげるとか言って部屋を出て行った気が……しかも、僕も少し酔っ払ってたから、いいねいいねって言ったような……。
血の気が引いていくような気分だ。これはバレたら怒られるかもしれない。というか、エンリッヒのことだから怒ると思う。謝れば許してくれるかな……。
「って、ハイネ? どこ?」
部屋にハイネがいない。見回しても、ベッドにもいない。
まさか酔っ払って窓から−−
窓の外を見下ろすと、晴れた空の下で洗濯物を干すルナリアの姿があった。
「ルナリア、ハイネ見なかった!?」
僕の声に気づいたのか、ルナリアはこちらを見上げて言った。
「あらお嬢様、おはようございます。ハイネさんなら、下にいますよ」
お礼も言わずに、僕はすぐに部屋を出た。
廊下は走るなとルナリアに言われていたけど、今はそれどころじゃなかった。
よかった、いるんだ。
もうあの時のようなことはないとは思うけれど。
離れてしまうのはもう嫌だ。
階段を下りた先の、広間の扉を大きな音を立てて開けた。
「ハイネ!」
「ふぇ……マリィ……どうし、たの?」
ハイネは暢気そうな顔をして振り向いた。
口にはトーストをくわえている。目の前の皿には、何枚ものトーストが積まれていた。
「おや、おはようマリィ。昨日は星は見れたかい」
新聞を広げているエンリッヒがこちらを見る。
そんなエンリッヒを何事もなかったかのようにスルーし、ハイネのもとへと急ぐ。
息を整えながら、ハイネの座る椅子までゆっくりと歩く。
こちらを見るハイネを、じっと見つめて立ち止まる。
「もう……心配させないでよ……」
ハイネは僕の表情から理解したのか、パンをくわえたまま手招きをして僕を呼ぶ。
僕は何も言わずにその手の招くところへと進む。
「ごめん、なさい」
口にくわえたトーストを食べ切って、ハイネは僕の頭を撫でる。
それで済むのか、それでいいのか、と思うこともあるけれど意外と僕の心っていうのは単純だった。
「泣かな、いで、ね?」
ハイネが微笑みながら言うので、特に僕は反抗することもなくおとなしくしていた。
まあ、うん。
それぐらいで許せるっていうのも、どうかなってところだけれど。
「ところで、書斎にあったワインが見当たらないんだが知らないかい?」
ワインという言葉に、僕とハイネは一瞬驚く。
「ん? 何か知っているのかい?」
僕とハイネは、顔を見合わせて頷く。

−−逃げようか。

−−うん、逃げ、よう。

ハイネはトーストを二枚手にとって。
僕はハイネの空いた手をとった。
「知らない。ね、ハイネ」
「うん、知らな、いわ」
エンリッヒが首を傾げているのを余所に、部屋から出る。
扉を閉めて、急いで階段をあがっていく。
僕らの部屋に入って、一息つく。
扉を背にして、二人でふうと息を吐く。
その様子がおかしくて、僕たちは笑う。
「そうだハイネ、僕からの提案があるんだ、聞いてくれる?」
手に持ったトーストをかじりながら、ハイネは首を傾げた。
「旅に出よう。色んな世界を見て周りたいんだ」
ハイネはイマイチわかっていないような顔をしていたけれど、一枚目のトーストを食べ切ってから、すぐに笑顔で頷いてくれた。そしてまた、もう一枚のトーストをかじりだした。
「よし、じゃあ準備をしよう。スーツケース用意しなくちゃ」
ハイネのかじっているトーストを僕もかじって、着替えを始める。
楽しみだ。
まずはどこへ行こうか。
それもまだ決めていないけれど、ハイネと相談して、とりあえず行けるところまで行ってみようと思う。
「ん、でも、いきな、り、なんで……?」
ハイネがそう聞き、僕はベストに袖を通して答えた。
「僕とハイネの、思い出づくりのために。それと」
ハイネも服を脱いで、着替えている。
ハイネがこちらを向くまで待って、僕はその次の言葉を告げた。
「誰かに説明するための理由なんていらないさ」
星が落ちる日の翌日のこと。
僕とハイネは旅に出ることに決めたのだった。














to be continue the next story → Cross×Over!!













PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Copyright © その数秒を被写体に : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]

管理人限定

カレンダー

02 2025/03 04
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

フリーエリア

最新コメント

[11/11 りょ]
[11/20 Mes]
[11/16 りょ]
[10/14 朋加]
[09/29 朋加]

最新記事

(05/20)
(05/15)
(05/11)
RAY
(05/11)
(05/09)

最新トラックバック

プロフィール

HN:
ikki
性別:
非公開

バーコード

ブログ内検索

P R

カウンター

アクセス解析