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その数秒を被写体に

日常を主に綴っていく日記。バイクと釣りと、後趣味の雑文なんかが混ざる。

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それでも世界は生きているから 圭と遼篇2

遼がいなくなりました。あ、遼は、はるかって読みます。朝起きたらいませんでした。
着替えた後があるのは一目瞭然。
だけれど、本人の姿がない。
はてさてどこへ行ったのか。記憶を呼び起こして、それらしい発言を探すが全くもって見当たらない。一体、どこに行ってしまったのだろうか。
とりあえず半日ほど待ってみることにした。そういえばセリもいない。
鳥かごはあるけれど、本来そこに住まうはずの存在はいない。何があったのだろう。
今日が十月の何日かわからないけれど、とにかく十月の暑い日のことだ。遼がセリと共に消えてしまった。



夕焼けが綺麗に見えたのに、遼は戻ってこなかった。今まで何も言わずにいなくなるなんてことがなかったから、少し不安になりつつあるのだが。しかしそれにしても、どうしたことだろうか。
今更かとも思ったが、探しに行くことにした。どこにいるかわからないのに探しに行くだなんて普段ならしないことだ。そう、普段ならば。今この時をもって、いや、朝気づいた時から既にこの状態は普段とは違ったのだ。もっと早く気づくべきだったのかもしれない。過ちを犯してしまったことに。
どこからか声が聞こえてきたのは、夕日が沈みかけたころのことだった。
羽ばたく音と甲高い声。
セリだけが戻ってきた。
「タイヘン!タイヘン!ハル アブナイ!」
検討違いの場所に降りながらセリは喚く。
駆け寄って、腕に留らせてやる。
「アブナイ! アブナイ!」
「おい、何だ、どうしたってんだよ」
いくら何でも、動物の心までは読めない。
いつもなら、うんざりするところだけれど、今はそれを悔やむ。
しかし、悔やんでばかりいられない。
「落ち着け、落ち着いてくれよ」
セリはばたばたと羽を羽ばたかせて叫ぶ。
「ハル アブナイ! ハル アブナイ」
それだけ言われても、どうにもならないけれど。
何か嫌なことが起きていることぐらいはわかった。

エンジンを暖めたカタナに跨り、アクセルを回す。伝わる駆動音が響き、心地よい振動となった。
先導はセリに任せたいのだが、こいつは鳥だ。夜目が利かない。
「セリ、大体の場所はわかるんだろ? 頼む、手遅れになる前に遼のところに」
セリは肩にとまって、何も言わなかった。
時折、羽をかく仕草をしているが、それでも俺はカタナを走らせる。
暗闇の中を心もとない光で照らしながら走る。
世界は崩壊したものの、道路はまだ残っているし、建物だって一部崩れているぐらいだ。
バイクで走るにはまだまだ余裕のある道ばかりで、少し助かった。
どんどん走らせて、どんどん駆け抜けていく。
一人で走るには、まだ心地のよい気候であった。
いや、そういうことを今言っている状況じゃないのはわかっている。
大分焦っているんだ、俺だって。
失うってのが、辛いことだと理解しているからこそ。
遼を失うわけにはいかないのだ。
俺を救ってくれた、彼女を失うだなんて。

セリががあがあと喚きだしたあたりで、カタナから降りた。
「この辺なのか」
俺は住宅街の一角、同じような一軒家ばかりが並ぶ場所にたどり着いた。
「どこなんだ、セリ」
セリは俺の声に反応せず、きょろきょろと辺りを見回すだけだった。
俺もそれにならい、辺りを見回した。
何故か住宅の中心辺りに、一軒だけマンションがあった。
そこだけ、何故か暗闇の中で光を帯びている。
それが気になり、俺はそこへと向かう決意をした。

「何だ、これ……」
マンション全体を包む、布のようなもの。
一階だと思われるあたりには、蔦が覆い茂っており、まるで大樹のようになっている。
上へと目をやると、人の住んでいる気配はないものの、暗くてよく見えなくなっている。
でも、何故かそこに入らないといけない気がした。
ふと、肩の重みがなくなっていることに気づく。
「ハル アブナイ!」
セリが空を舞い、はるか上空へとその身で飛びいく。
きっと、ここに遼がいるのだ。
そう確信し、俺は中に入る入り口を探した。



まるで、がれきの塔だった。
外観はマンションだったのだが、中はひどいものだった。
誰かが崩した後があり、まるで迷路のようになっていた。
そのおかげで、最上階まで来るのに苦労した。
「くっそ、セリもいねえし……」
流石に息はきれてはいないが、もう限界に近いものがある。
でも、この正面のドアを開ければ、そこに何かがあるんだ。
もう雰囲気でわかる。ここだ、ここに、遼が。

抑えきれない、この希望と、絶望感を。
俺はまるで、何かに憑かれたかのように。
このドアを開けた。
漂う匂い、まるで何かが腐ったような匂いだった。
マンションの一室を、まるで誰かが崩したかのように。
入るのを躊躇うような、気配があった。
壁という壁の代わりに、何本もの柱のようなもの。
床から天井まで伸びて、時折表面がうねる。
まるで何かがその中で蠢いているようにも見える。
奥から、セリの鳴き声が聞こえてきた。
それに気づき、躊躇いを捨てて駆ける。

視界に入ったのは、まわりのものよりも一回り大きなその柱のようなもの。
その根元に、背を預けている、遼の姿だった。






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